選手インタビュー

鈴木大地さんインタビュー

鈴木大地さん 鈴木大地さん 競泳 1984年 ロサンゼルス,1988年 ソウル

(文:田坂友暁、写真:フォート・キシモト)

自分だけの武器が世界と戦う自信になる

それに私がラッキーだったのは、練習の拠点は民間のスポーツクラブでしたが、研究施設があったことです。50mプールで泳ぐ機会なんて1年に数回しかなかった時代でしたし、実際に私が練習していたプールも25mの5コースで、水深も1mちょっとしかありません。そんななかで、運動生理学を元にしたトレーニング方法などのアドバイス、今で言うところの医科学サポートをしていただけていたのは、周囲に比べて一歩進んでいたと思います。

水泳だけの歴史になってしまいますが、チャンピオンになるには、それなりに何か世界から見ても優れているものがないといけないと思うんです。

私の前に金メダルを獲得された田口信教さん(ミュンヘン大会男子100m平泳ぎ金メダリスト)は、試合で泳ぐ直前に、メインプールの後ろ側にあるダイビングプールで少し泳いだそうです。そこで、心拍数を120、130くらいまで高めて、ちょっとドキドキするくらいの状態でレースに臨んだ、というんです。

私はその本を読んで、ああ、この人は運動生理学の知識があった人なんだな、と思ったわけです。

私は選手時代、柔軟性を武器にしていました。加えて、当時の日本では珍しいウエイトトレーニングを取り入れていました。そういうプラスアルファというか、人よりも先に、人と違うことに取り組んでいることが、選手にとっては自信につながるんですね。もちろんそれが正解かどうかは分かりません。ただ、私の場合は流体力学もそうでしたし、バサロキックという人とは違う練習をやっているというオリジナリティが自信になっていたと思います。

スポーツは多角的に社会や世界とつながっている

鈴木大地さん

ソウル大会が行われたのは、ちょうど1980年代の終わり、まさにバブルの時代でした。そういう時勢も良かったのかもしれませんが、私がメダルを獲ったあと、全国の水泳人口が20%ほど増えたそうです。これはうれしいことですよね。自分の活躍によって、水泳に興味を持ってくれる方が日本全国にそれだけいたということですから。

このように、オリンピックなどの大きな大会で活躍する選手を見て、競技者ではない一般の方々が刺激を受けて新しいスポーツを始めたり、子どもたちが運動を始めたりしてくれることもあるわけです。

スポーツをする人、見る人が増えれば、自然とスポーツビジネスも大きくなっていきます。それと同時に、スポーツをする人が増えると健康になる人も増えていく。身体を動かすことは、精神的にもとても前向きになる効果があります。それは社会にとっての活力になっていく。総合的にスポーツは社会、世界とつながっていると思います。だから、私たちはスポーツをもっと盛り上げていく必要があると感じているんです。

スポーツと健康について、IOCとWHOが手を結び、取り組んで行くことが決まりました。世界的に、健康のためにスポーツを行うことが推進されていきます。身体を動かすスポーツは、人間の健康を作りあげるための一翼を担うことができるわけですから、単なる競技スポーツではなくなってきている。オリンピックやパラリンピックで金メダルを何個獲るとか、メダル争いをするとか、それも当然大切なことですが、それよりももっと大きな価値が、スポーツにはある、ということを私たちは認識しなければならないのではないでしょうか。

スポーツの可能性を広めるためにOAJが率先して発信していく

鈴木大地さん

身体を動かすことは、自然治癒力や自己免疫力がアップすることにもつながります。そういう、人間の基礎的な力を向上させてくれるのも、スポーツが担える役割のひとつです。

スポーツと言っても様々です。ひとり黙々と取り組んで楽しむもの、人と対戦して、あるいは大勢で取り組んで楽しむものもあります。健康目的に走ったり、ストレス発散のために身体を動かしたり、自然と戯れたり。スポーツは十人十色の楽しみ方や取り組み方があるんです。そうやって楽しく身体を動かしていく中で、自己免疫力があがっていつの間にか身体が丈夫になって健康になる。そういう世界を作れたら良いですよね。

良い例は、OAJの皆さんですよね。1964年の東京大会でご活躍された方々も多くいらっしゃるんですが、皆さん80歳を超えているのに元気一杯です。スポーツをやってきた人たちは、基礎的な体力が高い人が多いので、病気にもかかりにくいですし、かかったとしても回復力が非常に高い。運動することで身体が健康になる、ということを体現されていらっしゃる方々です。

そういう意味では、私たちはもっと世の中に発信していかなければなりません。自分たち自身が、スポーツをすれば健康になる、ということを証明しているわけですから、皆さんも私たちと一緒に元気になりましょう、と。

それに、OAJの皆さんは人生をスポーツに懸けてきた人たちの集まりですから、ひとり一人に多くのドラマがあります。そういうドラマは、純粋に面白い。そういった話を聞いた人がそのスポーツに興味を持って、実際に見たり、自分で取り組んだり、もしくは支えてくださるかもしれない。そういう可能性を広げられるわけですから、私たちOAJが発信することで、スポーツの良さ、スポーツの価値をもっと広めることができるのではないでしょうか。

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