選手インタビュー

荒川静香さん 荒川静香さん フィギュアスケート 2006年トリノ

【フィギュアを取り巻く環境の変化】

元川:フィギュアの選手にとってコーチの存在がいかに大きいかということが荒川さんのこの本にも書かれていますが、たくさんのコーチを選んで変わっていますけれど、フィギュアの選手というのは頻繁に、自分に合わないと思ったらパッと変えて師事したりしますが、それはすごい適応力だなと思うんですけど、コーチの選手の関係というのはどういうものですか。

荒川:私が育ってきた仙台の地域にはあまりコーチがいなかったので、選ぶことはできませんでした。そのクラブに入ればそのコーチしかいない。辞めたところで行く先がない。東京などは、今でこそコーチがたくさんいらっしゃるので、次々と選手が自分に合うコーチを求めて移動するようですが。

元川:それが最近のトレンドということですね。

荒川:あとは、首都圏はそうだったんじゃないですかね。

元川:仙台のときはそのクラブの、長久保さんにずっと師事されたんですか。

荒川:はい。

元川:一人のコーチにずっとつくのと、自分でコーチを選ぶことのメリットの違いというのはどんなところにあるんですか。

荒川:自分がもっと伸ばしたい技術を教えることの技術を持っているコーチがいれば、そこに行けばその技術はもっと伸びますし、やはり新しい刺激や新しい技術を自分が求めたときに、教えるテクニックを持ったコーチと巡り会えればすごく伸びるというのが一つあると思います。あとは選手がレッスン代をコーチに払って見てもらっているので、コーチは選手を選べなくても選手はコーチを選べるという、その違いでしょうね。

元川:でも最近、例えば伊藤みどりさんの頃であれば本当に一握りの人しか世界大会に出なかったのに今はこんなにたくさんの選手が次々と出てきてメダル候補と言われるようになったんですけど、そのへんの環境も今のコーチによる部分なのかなと思ったんですが。

荒川:コーチではなく、連盟の体制が変わった部分もあるのではないかと思います。昔は、国際大会に出場する際は全て自己負担だったそうです。だから、才能を持っている選手でもお金を持っていないと行けなかったのが、時代の流れとともに大きく変わってきています。私のときはコーチの諸経費は選手持ちが大半だったのですが、今はコーチの渡航費や宿泊費は連盟に負担してもらえるそうです。 やはり選手が活躍して予算がとれればそれだけ環境は良くなる。だからトリノ以降のフィギュアスケートを取り巻く環境も、金銭面でも変わったと思いますし、それは自分がスケート界に敷けた一つのレールでもあると思います。自分がやってきた時代のレールを引いてくれたのは、それこそ佐藤有香さんであったり伊藤みどりさんであったり、時代の流れとともに先輩が敷いてきたレールの上にのってやってこられました。先輩方々の頑張りがあったから私の結果もあったと思います。 伊藤みどりさんが活躍してた頃はその前の世代の方々がやっていて、元を正せば佐藤信夫先生であるとか佐藤久美子先生がすべて実費であっても参加して世界へ出ていって、名前を広めてくださったその世代、歴史があるから今があると思うので、それは本当に歴史の繰り返しだと思います。ここで今、次の世代が育つためには、現在のアマチュアスケーターに更なる活躍を願っています。

元川:選手の質というのはどう変わったんですか。はた目から見ると、例えばみどりさんの頃はジャンプは跳べても芸術性が足りないなどと言われていたと思いますが。

荒川:競技だけではなく、練習環境もどんどん外に出ていけるような環境が整ってきているのではないでしょうか。やはり日本で練習する環境がなかなか取れなければ海外に行って練習する、ということを当たり前のように今の世代の選手たちができるようになったことは、大きな違いだと思います。私たちの時代は外国人振付師やコーチがつくなんてことは二十歳くらいまではまったく考えたこともなかったんです。それを今のトップ選手は中学生の頃からやっている。 そのスタートラインの違いはありますね。それを中学生の頃に始めるか二十歳を越えて始めるか、はたまたやらなかったかで、表現力や得られるものの容量が変わってくるのは当然であって、その違いだと思います。

元川:ちょうどその過渡期にいらっしゃった方として、こうやって環境が変わってきたことというのはすごく好ましいと思いますか。

荒川:私たちよりちょっと前の世代の選手から、自分で出ていくようになったんですね。だからここ数年、選手たちが簡単に外に出ていけるようになった、というのはあると思います。日本の選手を指導すれば結果を出してくれるというふうに思えば、外国のコーチも受け入れてくれるようになる。そういったことも含めて、やはり今までに外に一歩を踏み出した人たちの功績なんだと思います。そういう繋がりを大切にして、未来の選手へどんどん繋がっていくといいですよね。

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