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- オリンピアンインタビュー
- 第2回 渡辺武弘さん
【優しすぎる性格】
高橋:渡辺さんは人がいいから勝負には向いてないんじゃないかって、よく言われるそうですが、ご自分でもお感じになりますか?
渡辺:いや、そういうふうに言われる、すごく言われてたんで、そうなのかなっていう、ある程度自分で認めてしまってた所ありましたですね。で、案外負けず嫌いじゃ私無いんですよ。たぶん普段の生活では。
高橋:はい。すごくお話を伺ってても穏やかな。
渡辺:はい。
高橋:今その予選で親しい方と当たって嫌だなっておっしゃってたのが…でも勝負になったらそんな。
渡辺:ええ、もちろん一生懸命やりますけど。
高橋:そうですよね。勝負になってもこう人に譲ってしまうというそういうことは。
渡辺:そんなのは、そんなことは1回もしたことがないですね。それは絶対別問題ですから。
高橋:そこはもう別という。でも、やっぱり不思議だなと思うのは勝負の世界に生きていこうと思われることは、どこかすごく負けず嫌いだったり、どこかすごく人よりも一歩上を行くぞという、そういうイメージがあるんですけど、全然そういう感じではないんですか?
渡辺:いや、一時期やはりすごくそういう人間性を求めた時期ありましたですね。
高橋:自分の中で。
渡辺:ええ。
高橋:こういう人間になりたいって?
渡辺:ええ。例えばもうジャンケンするのにも。卓球ってあのうサーブとレシーブを最初に決める時もジャンケンして決めるんですけど。それ、まず、まあ、ジャンケンから、要するに勝ちに拘るとかですね、ジャンケンでさえも勝ちに拘らなきゃいけないなと思った時期もありましたし、有言実行しなきゃいけないなと思ったこともありましたし。とにかく自分はまあ、なんて言ったらいいんだろう、さっき言われたように人がいいとよく言われたことがあったんでそれを変えようと。意地悪な所、頑固な、こんな人間にならなきゃいけないって一時期ずっと思ったことありましたですよ、何年間も。
高橋:それはお幾つぐらいの頃ですか?若い頃ですか?
渡辺:いや、それは社会人になってからですね。
高橋:若い頃に悩まれたんじゃなくて。
渡辺:学生の頃はそんなことはあまり感じたことは無かったんですけど。やはりいろんな大会とか出たりするとやっぱり、ここ一番で負けたりとかすると、「だからお前は欲が無いんだよ」とかですね。
高橋:あ、欲が無いって言われるんですか?
渡辺:「だから、人がいいから駄目なんだよ」とか言われるんです。大会ででいろいろあって。そうすると何か人間を変えないと。やっぱり自分、ねぇ。自分で悩んだ時期がすごくありましたですね。
高橋:で、変わりました?
渡辺:いや、結局ね、変わらなかったんですよ。
高橋:ですよね。
渡辺:変わらなかったんですよぉ。実はね変わらなかった・・いや、少し変わった所はあったんでしょうけど根本的なものはやっぱり変わらなかったんです、これは。
高橋:そうですよね。それはでも大切なことだから、やっぱり。勝負の世界では分からないですけど、人間的な魅力という意味ではね、お人柄がいいほうが。こういうふうに変えたいと思ったときに、目標となる人とか選手とかはいらっしゃいましたか?
渡辺:ええ、ダブルス組んでた斎藤君って、彼がね、もうスポーツにはものすごく向いてるんですよ。とにかく勝気があって元気があって、要するにご飯食べてものすごく自信家で。もう自信を持っているんですよ。自分のプレーにすごい自信家で。もうあらゆる面でね、すごいなって。それこそすごいプレーをするんですよ、彼は。ものすごくプレッシャーに強くて。だから卓球会ではもう名を残した選手なんですけど。彼が1年下にいましてね。この斎藤はすごいなって。俺もこういうふうにならないとって。もう社会人は離れたんですけど、高校、大学一緒で。社会人になってからもやっぱり大会の時によく一緒になりますので。こういう性格じゃないとやっぱり試合って挑めないんだなって、よく感じてましたね。
高橋:具体的に何かしたことはありますか?
渡辺:だからさっき言ったジャンケンとか、例えばその言いたいことをしっかり発言できるようにしたいとかですね。ま、何か行動する時は率先して行動しようとかですね。ま、そういう時期もありましたですね。でもやっぱり自分で苦しいんですよね、すごく。
高橋:そうですよね。
渡辺:すごく窮屈、苦しい。
高橋:分かります、すごく、そういう気持ち。