選手インタビュー

上野由岐子さん 上野由岐子さん ソフトボール 2004年アテネ

【将来の道は北京にかかっている】

高橋:北京オリンピックが終わってしまった後、次のオリンピックから公式種目から外されてしまうことになると、その後どういうふうにしていきたいですか。目標は、今は北京オリンピックですが、その後の目標がなくなってしまいませんか。

上野:オリンピックという目標はなくなってしまいますけど…。

高橋:では、次の目標は何か。

上野:目標を立てるしかないですね。

高橋:まだそれは考えてないのですか。

上野:まだ考えてないですね。そのとき自分がどう思っているかは、今の自分には分からないので。

高橋:そうですよね、確かに。でも、ソフトボールは続けていかれたいわけですよね。

上野:続けたいなとは思っていますけど、正直、今の自分には…そのとき自分がどう考えるか、本当に北京オリンピック次第だと思います。

高橋:今までで競技中、一番うれしかったことは何ですか。

上野:ピッチャーをやっていて試合をする中でうれしいときは、やっぱり試合に勝ったときとかに、「上野、今日良かったよ。ナイスピッチング」と同じ選手のチームから声を掛けてもらうことが一番ですね。

高橋:やっぱり仲間なのですね。

上野:自分の今日の出来に対して、すごく認めてもらえたというか、これで良かったんだなというか、一生懸命投げて良かったなと思える一瞬だし、やっぱりみんなが「良かったよ」って言ってくれるぐらい、自分のピッチングを必死に見てくれたんだなと思うし、それだけボールに集中してくれていたんだなというのは感じるので、そういった意味で、そのときが一番うれしい。みんなが自分という存在を信頼して守ってくれていたという証拠だと思うので、そのときがやっぱりうれしいかなと思います。

高橋:投げているときは何を考えているのですか。何も考えていないのですか。

上野:バッターの様子を見たり、バッターは何を考えてるんだろうって思っているときもあるし、野手の様子を見たりとかもするけれど、実際、投げているときは正直、投げることに精一杯なので、何も考えていないですね。

高橋:逆に一番つらかったことというのは?

上野:やっぱり負けること。自分が打たれることで負けるわけじゃないですか。だから、すごい罪悪感を感じるし、自分がもっとしっかり投げておけば負けなかったのになという、チームに対して申し訳ないなという罪悪感が一番つらいですね。

高橋:そこが、やっぱり個人競技じゃないから、余計につらいというのもあるのでしょうね。みんな自分のせいでと感じてしまうと。

上野:そうですね。

高橋:ソフトボールを通じて得た大切なものというのは何かありますか。

上野:感謝すること。今の自分がこうやっていられるのは、自分だけの力じゃないし、本当に周りの人がいて、自分がこうしている環境にすごく感謝しなきゃいけないなっていつも思います。もちろん自分がうまくなりたいからソフトボールを頑張っているし、楽しいからやってるだけなんですけど、ただそれだけじゃこんなに長くソフトボールをやっていけないと思うし、自分がやりたいことに対して、たくさんの人が協力してくれて、支援してくれて…本当に今の環境が当たり前のように一日一日過ごしていますけど、当たり前じゃないし、感謝しなきゃいけないんだなっていうのはすごく思うし、そう思わせてくれたのもソフトボールに出会ってからなので、ソフトボールをやってなかったら感謝なんて知らない人間になっていたかもしれない(笑)。

高橋:だから、ソフトボールに出会ったのはたまたまかもしれないけど、それをずっと一生懸命やってこられて、それを支えてくれる人たち、応援してくれる人たち、環境を与えてくれる人たちに出会って、オリンピックに行かれた上野さんがいて、そこで感謝というものを大切だなというふうに思われるのですね。

上野:そうですね。感謝というのは、口で言えば簡単ですごくありがたい言葉みたいな感じですけど、本当に自分がどれだけそう思えるか。自分は本当に、自分だけだったら多分全日本にも入れなかったと思うので。

高橋:そうですか。

上野:はい。自分は料理もできないし、自分だけでは生きていけないので、そういう世話をしてくれたりお金を出してくれる親がいたり、指導してくれる監督がいたり、そういう方がいるから技術が身に付けられて、今の自分というのがいると思う。自分だけだったらただの世間知らずで終わったと思うので、本当にたくさんの人に感謝です。みんな上野にうまくなってほしいからとか、そういった善意を持って接してくれていると思うので、そうやって自分に協力してくれる方に本当に感謝したいなと思うし、そういう周りの環境に恵まれている自分がいるということを、すごくありがたいと思います。

高橋:では、オリンピックとは上野さんにとって何ですか。「オリンピックとは○○である」と言われた場合、なんと答えられますか。

上野:目標ですね、夢というか。オリンピックで金メダルを取るということを中学校のときに思って、ずっとそれを夢見てここまで来たし、オリンピックという存在があったから今の自分があるんだなと思う。

高橋:オリンピックがあるからって、いい言葉ですね。では、最後に、当たり前の質問になってしまうのですけど、北京オリンピックに向けてのお考えや抱負をお願いします。

上野:北京オリンピックで金メダルを取るために今やっているし、金メダルを取ることしか考えていないので、もう本当に、北京オリンピックでは金メダルを取りたいです。

高橋:頑張ってください。

上野:はい。ありがとうございました。

高橋:ありがとうございました。

~上野由岐子さん インタビュー 完~
(インタビュアー:立教大学社会学部准教授 高橋利枝)
>>インタビュー写真集

ゲストプロフィール

上野由岐子さん
上野 由岐子(うえの ゆきこ)
1982年7月22日福岡県出身。ルネサス高崎に所属。投手。小学3年生でソフトボールをはじめ、2004年アテネ大会ではオリンピック史上初の完全試合を達成し、銅メダル獲得に貢献。最高時速119kmのストレートは、野球での体感速度160~170km/時に匹敵するという。173cm、72kg。右投右打。
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